ラジオ体操
※夢主に弟がいます(名前は出ません)
一人で行かせるのは少し危険かと思い小学生の弟のラジオ体操についていったら、嵐山隊がいた。三門市とボーダーが協力して、夏休みの間嵐山隊が前に立ってラジオ体操の見本となったりスタンプを押してくれるらしい。そういえば本部のロビーにそんなチラシが貼ってあった気がしたな、とこちらに気づきいつも通り爽やかな笑顔を浮かべて手を振る嵐山さんに思った。嵐山さんがこちらを見ているのに気付いた他の嵐山隊の皆も手を振ってくれたから、
も笑って手を振り返す。B級隊員の
はランク戦と防衛任務をやるだけで中々大変な気がしているのに、嵐山隊はその上広報活動までこなすんだからすごい。
ラジオ体操が終わると、スタンプカードにスタンプを押してもらおうと子供たちが一斉に前に向かう。三門テレビでよく見る地元のヒーローたちを生で見れたとあって皆大喜びだ。騒ぐ子供たちにニコニコと応対する嵐山さんはさながら教育テレビに出演する体操のお兄さんのようで非常に様になっている。
少し離れたところでその様子を見ていたら肩を叩かれ振り返った。
「おはよう」
「とっきー!」
肩を叩いたのは同じクラスのとっきーこと時枝だった。少し前まで嵐山さんの近くにいたと思ったんだけど、こっちに来たみたいだ。
「弟さんの付き添い?」
「うん。一応
もいた方がいいかなって」
「偉いね」
「いやいや、どう考えてもとっきー達の方が偉いでしょ! 広報活動お疲れさま」
ボーダーの顔として防衛任務だけでなく幅広い活動をする嵐山隊には本当に頭が下がる。広報活動をした上A級でちゃんと成績を出しているんだから、偉いどころの話じゃない。スタンプの列をさばく嵐山さんと木虎ちゃん、スタンプを終えて興奮ぎみに群がる子供たちと話す佐鳥を見て素直にそう思った。もちろん、とっきーも立派だ。
そのままの言葉を口に出すととっきーは三白眼をゆるめて笑い、少し照れたように「ありがとう」と言った。
「おれ達はこれから先毎日来るけど、
さんも毎日来るの?」
「うん。弟のためだけじゃなくて、夏休みの間生活リズムが狂わないようにするためにもいいしね」
予定がないと休み中は昼過ぎまで寝てしまいそうだからそれを防ぐためにも、そして運動としても朝のラジオ体操はちょうどいい。早起きは苦手だけれど、頑張らなければ。
話し込んでいるところにスタンプを押してもらうのが済んだ弟が駆けてきて、
ととっきーは顔をあげた。
「ねーちゃん! 本物の嵐山だった! 本物!!」
「さんを付けてさんを」
テレビの中の人間に対する感覚なのかもしれないけれど、
にとっては嵐山さんはよく知るボーダーの先輩だ。たしなめる言葉を聞いたのかどうか、弟は
の隣に立つとっきーに気づいてまた大きな声を上げた。
「あ! 時枝だ!!」
「さんを付けて頼むから」
より大分低い位置にある頭にチョップを落とすのを見てとっきーが笑う。軽めのチョップにひるむことなく弟はキラキラした目で
ととっきーを交互に見つめた。
「ねーちゃん時枝さんと知り合いなの!?」
「うん。
もボーダー隊員だし、とっきーは同じクラスだしね」
「仲良いの?」
かなり仲は良い方だと思う。そう言おうと口を開いたところでとっきーが先に言葉を発した。
「おれはお姉さんともっと仲良くなりたいと思ってるよ」
「へ!?」
より早く弟の質問に答える、隣に立つクラスメイトに思わず間抜けな声を出した。仲良くなりたいとは、一体どういうことなのか。
動揺して何も言えなくなる
を見てとっきーが笑う。いつも通り優しげな笑顔は何故かいつもよりずっと男らしく見えた。
「明日も明後日も、ずっと毎日来るのを待ってる。楽しみにしてるよ」
これから1ヶ月以上続く朝の時間を想像して、赤くなりながらも気分が高揚するのを感じた。苦手な早起きも、続けられそうだ。