絵日記
少し前に我が本丸にはテレビを導入したのだけれど、これがなかなか好評だ。最初の内は皆テレビ中毒になってしまうのではないかと心配したがそれも杞憂に終わり、適度に楽しんでくれていて審神者としても嬉しい。
ニュースにドキュメンタリー、ドラマにアニメ。見る番組は男士によって違うけれど、テレビの置いてある部屋は普段隊が違ったりしてあまり話さない者達のいい交流場にもなっていた。思い付きで設置したものの、なかなか良いアイディアだったんじゃないかと思っている。
暇なときにはテレビを見るという選択肢が本丸に根付いてきたある日。昼間に非番である粟田口の短刀たちとニュースを見ていると、彼らと同じくらいの年頃(あくまで見た目がである)の男の子が空港でインタビューを受けていた。日焼けしたその子が笑顔で祖父母の家へと遊びに行ってきたと言うのを聞いて、そういえば世間は今夏休みだったかと思い出す。お盆も近いし、帰省ラッシュが起きているのだろう。
「主君、絵日記とはなんですか?」
アナウンサーが男の子に「絵日記に書いた?」と聞くのに秋田が
の方を向いて首を傾げた。
「その日起きたことを絵にしたり、絵に短い文章を添えて書いた日記のことだよ」
「日記……その日の記録というわけですね」
説明に秋田の隣に座っていた平野がふむ、と頷く。
「そうそう。この男の子はしばらくの間お休みだから、お休みの間に何をしたか毎日記録をつけるの」
「おやすみ……今日の僕たちみたいにですか?」
「そうそう」
の隣に座る五虎退がこちらを見上げるのに頷いて小さな頭を撫でた。絵日記はなかなか良いものだ。
も小学生の頃には夏休みの宿題としてつけていた。もしかしたらまだ実家に残っているだろうか。
「文だけじゃなくて絵も一緒に描いておくと、後で見直した時にそういえばあの日こんなことしたな~ってすごく懐かしい気持ちになるの」
絵日記を書くのは結構面倒な部分もあるけど、なんだかんだ思い返すと懐かしい。しみじみと思い出してそう言うと短刀たちはへえ~と感心したような声を上げた。まだテレビの画面に映る男の子を見る粟田口たちは羨ましそうで。ふと思いついて、声を上げた。
「皆もつけようか! 絵日記!」
の声に皆いっせいにこちらを見る。
「非番の日に、何をしたか自分の日記に書くの。遠征や戦闘に行く日は戦闘記録を書いたりするけど、お休みの時はそういう記録を付けたことないでしょう?」
「いいですね……! 楽しそうです」
提案に前田が目を輝かせる。他の短刀たちも頷きあって、嬉しそうに歓声を上げた。
「お昼ご飯食べたら皆で万屋に絵日記帳買いに行こっか」
「やったあ! あるじさん大好き!」
抱き着いてくる乱をなんとか受け止めると他の短刀たちもいっせいにぎゅうぎゅうと乗っかってくる。耐えきれず後ろに倒れ込みながらも、笑い声をあげた。今日も楽しい一日になりそうだ。