理屈はいらない

 人は、自分と同レベルかそれより上の人を好きになるものだと思う。このレベルがなんなのかはちょっと言葉で言うのは難しいけど(強いて言うなら総合的にだ)、今回は頭脳だと仮定してみよう。そうしたら、自分より上のレベルの人に恋するのってずいぶん不毛だ。財産や地位と違って頭の良さは生まれついてのもので、ほとんど頑張りようがないもの。

 イコール、の恋って不毛だ。

 IQ152って、よく分からないけど普通の人間よりだいーぶ上なのは確かだ。天才って呼ばれる部類に入る。っていうか実際フーゴは天才だし。頭が良いかは微妙だけど、まあ多分馬鹿じゃない(と思いたい)が日々悩んで生きてるんだから(最近は主にフーゴのことだけど)、きっとフーゴはなんかよりたくさん悩んで生きてるんじゃないか。より知ってることよっぽど多いだろうから。それとも、頭がいい人はくだらないことなんて気にしないで生きてるんだろうか。些事は気にせず、我が道を行くみたいな。でも、こんなことを考えてみたところで結局どうしようもない。だって、は天才じゃあないんだから!フーゴの考えることなんてどうせ分かりやしない。好きな人の考えることが全く分からないやつなんて、天才からしたら嘲笑、むしろ失笑ものだ。フーゴは基本的にいいやつだけど(キレた時はまったく別の話だ)、心の中ではのことを馬鹿だなあこいつとか思ってるかもしれない。でも、もしそうだとしても別にフーゴは悪くないんだ。自分より頭の悪いやつを軽視するのは仕方ないことだもの。天才ならもっと。いや、それともフーゴぐらいになると馬鹿にするとか面倒なことはしないで無関心なのかな。あ、でもナランチャ相手にキレるのはしょっちゅうだからそんなことはないのか。まあ結局考えても意味がないなぜなら以下略。

 フーゴがなんかどうでもいいって思ってるって想像するだけで吐きそうになる。でも馬鹿だなあって思われてたら泣きたくなる。
どうすればいいんだろう。

 同じっていうのは無理だろうけど、馬鹿だなって思われないぐらいにはなりたい。でもフーゴに馬鹿だって思われない程度って、かなり大変な気がする。
どうすればいいんだろう。

、君はね、理屈で考えすぎです」

 ジョルノは名前のとおり太陽みたいにきれいにほほえんで、の頭を撫でた。

「そしてね、恋愛ってのは理屈じゃあないんですよ」

 やさしく頭を撫でてくれる、さっきよりすこし意地悪な笑顔のジョルノの視線をたどると、部屋の入り口に真っ赤な顔のフーゴがいた。