理性はいらない

「行ってしまった……」

 少しびっくりした気分で大きく開け放されたドアを見つめた。ってあんなに足が速かったのか、知らなかった。それとも咄嗟の馬力か?彼女のスタンドのスピードだけじゃなく、本体も結構スゴいみたいだ。

 暢気に思っていたら、突然後ろから肩を掴まれて振り返らされた。

「ジョルノ~~おまえェェ~~ッ!」

 憤怒の形相で僕の肩を揺さぶるのは、もちろんフーゴだった。

 それにしてもなんとも要領を得ない怒り方だ。彼らしくもな…くもないかもしれない。でも、納得がいかないのは確かだ。

「だからなんで僕に怒るんです?」

 体をガクガク揺さぶられながら口を尖らせた。きっかけを作ってあげたんだから、僕は褒められてもいいぐらいのはずなのに。

「しがみついてきたのはの方からだ」
「それでもだ!!」

 理不尽。牙を向くフーゴにため息をついた。まったく、のことになると途端に心が狭くなるから困ったものだ。
じっとりと僕のことを睨みながらフーゴは口を開いた。

「……いつからの相談にのってた?」
「数ヶ月前から」
「なんで教えてくれなかったんだよもォ~~ッ!」

 グシャグシャと髪をかき回して彼は叫んだ。野暮なことを言うなぁ、こういうのは全部知った上で見守る(またはちょっかいを出す)のが一番楽しいのに。

「僕にかまってていいんですか? はどんどん遠くに行ってしまいますよ」

 僕の言葉にフーゴはハッと顔を上げてドアの方を見た。何度か僕とドアを交互に見た後走り出した背中に頑張ってくださいと声をかけると、覚えてろとの返事を返された。まったく、本当に気が短い人だ。

 、頭脳のことを気にする必要なんて本当にないですよ。惚れた相手の前では彼は普通の思春期の男だ。