一言から始まる不和

 ねえねえ早川センパイ聞いてください今日オレのクラス席替えしたんスよ、 それでね、新しく隣になったかなり可愛い女の子が「黄瀬くんの隣とかラッキーだなー」って小さく言ったのが聞こえたからあーこの子オレのファンなんだ、喋った事無いけど結構ミーハーなんだな、 嬉しいけどなんかちょっとがっかりかもって思って面白半分嘲り半分で

「オレの事好きなんスか?」

 って軽く聞いたらその子オレの事ミジンコかなんかを見るような目で見て

「思い上がりも程々にすれば?気持ち悪いね君」

 って言ったから、そんでその口調がすっげー怖くてすっげー冷たかったから、オレちょっと泣きそうになりながら

「じゃぁなんでオレの隣ラッキーって言ったんスか!?」

 って聞いたらその子オレの事すっごい馬鹿にしたような溜め息ついてゴキブリかなんか見るような目でオレを見て言ったんスよ、

「あのね、基本的に人間は見目麗しい物を好む生き物なの、それで黄瀬くんって馬鹿っぽいしというか実際馬鹿なんだろうし喋ったこと無いし正直全く興味無いけど一応容姿はかなり端正な方だから 授業中目の保養になるでしょ、授業簡単すぎてつまんなくてろくに聞いてないから周り眺めるしかやる事ないの、だからたまたま隣が黄瀬くんでラッキーだったなって言ったの、しかも前のの隣三村だったでしょ、 三村とかかなり不細工じゃん、だから相乗効果で黄瀬くんの隣に感謝してるの」

 って完結した後にオレの顔ジーっと見て最後に言ったんスよ、

「まあの彼氏のほうが黄瀬くんの一万倍いい男だけどね、あ、顔とかそういう意味じゃなくて、もちろん顔もすっごいカッコいいけど、性格最高だし面白いし優しいしのことすごい好きでいてくれるしホント最高の彼氏なんだ、そういうことでこれから1ヶ月隣よろしく」

 って終わらせて……なんかオレほんと自分に自信無くしてなんかもうオレってホントミジンコなんじゃないかな、 いやむしろそれ以下だよねもう生ゴミじゃね?どうしようもう立ち直れない、 誉められたんだか貶されたんだかよく分かんないしもうマジでどうしようって思ってたんスよ、センパイ慰めて、お願いします

 え、その子の名前? それは

「!!! そ(れ)っ、オ(レ)の彼女!!」
「ええええマジっスか!! それなんか色々納得いかねェェ!!! オレの方がセンパイより千倍いい男っスよ!!」
「テメッ黄瀬アイツに手出した(ら)ブッこ(ろ)す!!」
「出すわけないじゃないスか! 確かにあの子可愛いけど! もうオレ明日から教室行くの嫌っスよ!! 早く席替えしてェェェ!!!」
「どうでもいいけどオマエらさっさと着替えろよー練習始まってんぞ」