モブサイコ100SSログ3

影山茂夫/霊幻新隆/影山律/花沢輝気/神室真司
※追加中

影山茂夫

影山茂夫へのお題は『こんな君に恋した私が悪いんですが』です。
純粋な彼の視線の先はいつだってまっすぐで分かりやすい。簡単に彼の感情が分かってしまうのはそれがあまりにもひた向きだからだろうか。それとも、が誰よりもよく彼を見ているからだろうか。
恋心を胸に秘めているのはお互い同じはずなのに、モブ君との視線は決して交わることが無い。ずっとずっと、彼が見つめているのは学園のマドンナだ。
黒くて苦い気持ちを抱くのはお門違いだというのに。分かりやすく恋をしている彼に心を射抜かれたが悪いのだ。

あなたは『未来の約束をする』影山茂夫のことを妄想してみてください。
「将来のこと?」
「うん」
進路相談の時期だからだろうか。急にそんなことを聞いてきたモブ君にオウム返しで答えると、彼は神妙な顔で頷いた。
「正直あんまり考えてないなあ…県内で良い高校行けたらいいなとは思うけど」
「そっか…」
「卒業したらお別れする人もいっぱいいるよね…寂しいなあ」
当たり前のことに気付いてなんだかしんみりした気分になる。モブ君とはこのまま恋人でいられるだろうか。
「僕はお別れしないよ」
「え?」
「もしかしたらお互い違う事に興味が出て違う高校に行くかもしれないけど、僕は絶対君とさよならなんてしない」
真面目な顔で真摯に言われるとなんだか胸がいっぱいになって涙が出そうになるからやめてほしい。

あなたは『小さい子をあやすためにたどたどしく童謡を歌う』影山茂夫のことを妄想してみてください。
赤ん坊を連れひどく疲れた顔で「悪霊に憑かれている」と霊とか相談所に訪ねて来た女の人は、どう見ても育児ノイローゼだった。
「お母さんって大変だね……」
「うん…」
少し離れた寝台で霊幻さんにマッサージを受けているお母さんを見やってのの呟きに、モブ君も大きく頷いた。
そのまま言葉もなくしばらく二人で霊幻さんの恐ろしい速度で動く両腕を見やっていたけれど、ずっと目前の問題から目を逸らすわけにはいかない。
「……それで…」
「……」
目の前にあるベビーカーの中、つぶらな瞳でこちらを見つめる赤ちゃんはものすごくかわいい。けれど普段全く触れ合う機会の無い存在に、ただの中学生なとモブ君は戦々恐々だ。
「泣き出したりしないかなあ」
「今は機嫌良さそうに見えるけどね」
じいっと二人で見つめると、赤ちゃんは何度か瞬きをした後にその小さな顔をくしゃりとゆがめた。
「ふえ、」
「え!」
小さな声にモブ君が体を固まらせる。
知らない人間二人にじろじろ見られればそりゃあ怖くもなるだろう。未知の存在なのはお互い様だ。あと一歩で泣き出しそうな赤ちゃんにとモブ君はおろおろと意味もなく顔を見合わせた。
「ど、どうしよう?」
に聞く!?モブ君弟いるじゃん!なんとかしてよ~!」
「律とは年子だからあやしたのなんて憶えてないよ…!」
も分からないよ!」
どうしようどうしよう!
そう必死に考える脳裏に小さい頃見ていた教育テレビの歌番組が浮かんだ。
「そうだ、歌!子守歌!」
どんなに小さな子でも優しいリズムの歌を聞けば心が落ち着くはずだ。ぽかんとした顔でこっちを見るモブ君に「童謡!!」と言えば彼はたどたどしく歌いだした。
「ね、ねーんねーんころーりーよー」
なんだか調子はずれなその歌に、泣き出す寸前だった赤ちゃんはぐずるのをやめその大きな瞳でこちらを見つめる。
不安定な旋律にも声を合わせて二人でなんとか歌い終えると、小さな口がにぱっと笑みを浮かべた。
「よ、よかった……!」
「モブ君ナイス!!」
心底ほっとした顔のモブ君にハイタッチを求めると、彼は一瞬ポカンとした後慌てたように手を上げての手に自分のそれを合わせる。
またそーっとベビーカーの中を覗くと赤ちゃんが今度は眠そうに目をこすってるのが見えて、二人で顔を見合わせて笑ってしまった。赤ん坊って忙しいなあ。
「お、なんだよお前ら~いい感じにお父さんお母さんしてんじゃねーか」
マッサージを終えてこちらに来た霊幻さんが眠りについた赤ちゃんを覗き込むとモブ君を見て考えもしなかったことを言うから、達は真っ赤な顔でぎこちなくベビーカーから離れた。

霊幻新隆

あなたは『割り切ったフリがうまい』霊幻新隆のことを妄想してみてください。
「新隆!久しぶりだね」
同窓会の集合場所でそう言って声をかけてきた女に心臓が大きく脈を打つ。久々に聴いた声は昔と変わらず、かつて心底焦がれた響きのままだった。
「よお」
こういった時に少しも心情が表情に影響しないのは現在の職業のおかげだろうか。軽く手を上げてなんでもないように返すと、彼女は屈託なく笑って小さく手を振り返した。
そこに気まずさやぎこちなさは全くと言っていいほどに無くて、安堵と不満が入り混じった複雑な思いが胸を満たした。お互い納得して円満に別れた上に10年近く前の事なのだから、その瞳の奥に未練の影を探すのはおかしなことだというのに。
ふと目の端に映ったきらめきに瞬きして発生源を探す。軽く上げられた彼女の手を見れば薬指に銀色が光っていて、思わず喉を鳴らした。
「実はこの前婚約したんだ」
視線に気付いた女は照れたように笑って、その左手で頬に流れた髪一筋を耳に掛けた。
「そうか」
なんとか一言そう返すと、また照れくさそうな笑いが返ってくる。
細い指とそれを彩る輝きが視界に入るたびに喉をせり上がる得体の知れない感覚が、せき止められない流れのように喉を震わせた。
「なあ、」
まだお前と一緒に行ったあのカフェの薄いアイスコーヒーの味が、大学終わりに帰る道で繋いだ手の温度が、俺の部屋で初めてキスした時の感触が、忘れられないんだって。ガキみたいに大事に大事に、記憶の奥底にある宝箱に閉まってるんだって。そう言ったらお前、どんな顔するんだろうな。

時が経って、感情を隠すのは昔よりずっと上手になった。
学生の頃だったら、今みたいな状況に俺はもっとカッコ悪くあがけたんだろうか。まだお前のことが好きだって、諦められないって、そうなりふり構わず叫べたんだろうか。
「(……いや)」
きっと、これで良かった。今俺の気持ちを押し付けて、何も始まることは無い。前に進んでいる彼女を、ただ困らせるだけだ。だから。
「良かったじゃねーか、幸せになれよ」
「ありがとう、そう言ってもらえて嬉しいよ」
宝箱の蓋は開けない。鍵は閉まっておこう。
幸せそうに微笑む顔を網膜に焼き付けて、心の中でさよならを言った。

大学時代の彼女と同窓会で再会する師匠

影山律

あなたは『誰かの特別じゃなくてあなたの特別になりたいんですよ、もうずっとずっと前から、ってうだうだする』影山律のことを妄想してみてください。
「なんだってそう、貴方って人は!」
「へ」
急に机を叩いて立ち上がった影山君を、は呆けた顔で見上げた。憤りでか顔を赤くした彼は心底憎らしくてたまらないというようにこちらを睨みつけている。
足元にある彼の学生鞄には、たった今まで話のタネにしていた彼宛のラブレターが入っている。はただ、影山君は相変わらずモテるねえ、色んな女の子にとって君は特別なんだねえってからかいつつ褒めただけなのに。
「僕はもうずっと、貴方以外の人からの特別なんていらないんです!なのにそうやっていつもからかって…!」
クソッ、と吐き捨てて勢い荒くまた生徒会室の椅子に座り込んだ影山君は、紙の散らばる机に突っ伏してもごもごと呟いた。
「どうでもいいんだ…貴方以外にとっての特別なんて…」

花沢輝気

貴方は花沢輝気で『もう一度、恋をしよう』をお題にして140文字SSを書いてください。
「付き合って、くれないか」
この前なんの説明もなく唐突にを振ったテル君は、今日また唐突に現れて告白してきた。
「…どういうつもり?」
「ちゃんと向き合おうと思ったんだ」
自分とも、君とも。
そう言う彼は前より髪が短くなっていて、その瞳からは以前常にあった人を小馬鹿にしたような色が消えていた。
「君が好きなんだ」
真剣な顔でこちらを見つめる姿に、前に付き合っていた時よりも胸が高鳴ってしまった。

神室真司

あなたは『ただの挨拶もこの人が言うと特別になるんだな、って考えてたら挨拶返し忘れちゃった』神室真司のことを妄想してみてください。
「はい、オハヨー」
「おはようございまーす…」
こちらに返す生徒たちの朝の挨拶の声はひどく眠そうだ。今日から一週間生徒会主導の挨拶週間で、僕を含む生徒会は校門の前で登校してくる生徒達に次々と声をかけていた。
「おはよう」
「副会長おっは~」
「きちんとしろ」
隣に立つ徳川はこの調子。軽い調子で挨拶を返す3年生に睨みを効かせている。
「神室君、おはよう!」
苦笑しながら彼を見ているところに元気の良い声がかけられて、そちらの方を振り向いた。
「あ、」
こちらを見てにこにこと笑っているのは同じクラスの少女だった。
優しい声に心臓がどくりと脈を打つ。ただの、挨拶なのに。たった一言で朝の空気がひどく清々しいものに感じられて。
「朝からお疲れ様。また後で教室でね!」
僕からじゃなくて彼女から挨拶してくれたとか、嬉しいとか。色々感じて僕が何も言えずに突っ立っている内に、彼女はまた小さく笑い手を振ってから校舎の方へと歩いていった。
「……挨拶、返しそびれたちゃったよ」
朝の喧騒のなかに落ちた僕の呟きを聞いて、徳川が訝しげにこちらを見た。