ケンガンアシュラ/オメガSSログ1
ガオラン・ウォンサワット/今井コスモ/呉雷庵/大久保直也/鷹山ミノル/鎧塚サーパイン/夏忌
※追加中
ガオラン・ウォンサワット
あなたは『「好き」って言うとすごく嬉しそうにしてくれるから何度も言いたくなっちゃう』ガオランのことを妄想してみてください。
「好きだ」
短い言葉にふにゃりと相好が崩れる。
「はい」
「お前だけだ」
「…えへへ」
言えば言うほどに嬉しそうにするから、何度だって同じ言葉を繰り返す。
「お前だけを好いている」
「もガオランさんが大好き」
心底幸せそうなその笑みに、また胸の愛しさが増すのだ。
あなたがガオラン・ウォンサワットで書く本日の140字SSのお題は『空気読め』です
仕合の合間の休憩時間、会場の廊下を歩いていると見慣れた背中を見つけた。
「ガオラン!!」
少し離れた所から呼びかけると屈められていた背中がびくりと伸びる。
「サーパイン…貴様…」
振り返ったガオランの額には青筋が立っている。
地の底から響くような低い声に首をかしげると、先程まで大きな体に隠され気付けなかった女が顔を真っ赤にしてガオランから離れるのが見えた。
キスする寸前でした。
お題:140字SSお題出してみたより
『額にキス』をガオラン・ウォンサワットがすると萌え。『焦ったように』だと更に萌えです。
少し寝坊したせいで慌ただしい朝。急いで支度をしたガオランさんは玄関で靴を履くと見守っていたの方に向き直った。
「行ってくる」
少し乱雑に前髪をあげて、唇が額に落ちる。
「いってらっしゃい」
どれだけ急いでいても絶対にキスは欠かさない彼が愛しくて笑いがこぼれた。
お題:キスシチュったーより
タイで同棲してる設定で!
あなたは『言わないだけでめちゃくちゃ好きなんですけどねって思ってる』ガオランのことを妄想してみてください。
「めちゃめちゃ幸せ。あっちから言われない限り絶対別れないと思う」
「ベタ惚れじゃん」
「ベタ惚れだよ」
力を込めて言うのに、画面の向こうの友人は大笑いしていた。
休日の昼下がりに、日本に住む友人と久々に通話をしている。私の住むタイとの時差は二時間で、そこまで通話の障壁にはならない。 仕事でタイに赴任になり早数年。赴任1年目に出会った男性とお付き合いし、少し前に同棲を始めた。仕事は毎日忙しいながらも、幸せの絶頂といっても良いくらいに最高の日々を過ごしている。
同棲自体を提案したのは恋人──ガオランさんだけれど、完全に私の方が彼に惚れている自信がある。優しくて、強くて、かっこよくて、ストイックで、紳士的。正直どうして完璧を具現化したような彼が、私のようなごく普通の会社員と付き合ってくれているのかは分からない。でも分からなくても幸せだからいいかな、と思うくらいには彼のことが好きだ。
惚れた方が負けと言うけれど、全然そんな気はしない。ガオランさんのような素敵な人と付き合えている時点で負けも何もないからだ。
その後も少し話して通話を切り、イヤフォンを耳から外す。
ふともう飲み終わったはずのコーヒーの香りがすることに気づいて振り返ると、マグカップを持ったガオランさんがいた。ちょっと前に二人分のコーヒーを淹れてくれた彼はまだ自分の分を飲みきっていなかったらしい。
「どうかした?」
なんともいえない顔でこちらを見下ろして、その場に佇んでいる。
イヤフォンをしていたから、ガオランさんに友人の声は聞こえていなかっただろう。ただ、私の言葉からどんな話をしているかはなんとなく分かったのかも。
「……」
ひどく何か言いたそうな、歯痒そうな表情に首をかしげる。
「あ、コーヒー美味しかったよ。ありがとう」
これかな、と思って自分のマグカップを指差して言うと、クイズで大間違いした人を見るみたいな顔をされた。
今井コスモ
今井コスモへのお題:たとえ、ここに永遠がなくても/「かわいい。」/背伸びをしたら届くの?
余裕を持ったお姉さんが好きで、そういう人にかわいがられることが好き。
そう思っていたのに、いつからか彼女に年下らしく甘やかされることに歯痒さを感じていた。
接している時に相手がリラックスしているのは、異性として意識していないからだと。かわいがるのは、自分を対等の相手として見ていないからだと、そう気づいてしまったからだ。
本気になってしまえば、それまで甘受していた状態はたちまち生温い地獄へと様変わりした。
「コスモ君はかわいいね」
そんなこと言わないでなんて、今更どんな顔して口にできるんだ。
だから、少しだけ間を空けて微笑んだ。
「……ありがと」
隣に座る自分を見上げる目線は、ペットを愛玩するような甘やかしに満ちている。
それでもいいと思っている自分がいるのも馬鹿げていた。弟のように思われていても、そのお陰で近くに居られるなら受け入れようなんて。
自分の方がずっと背が高いのに、見下ろされているようだ。
背伸びしたって、力が強くなったって、彼女の隣に並べやしない。
お題:ふたりへ3つのお題より
今井コスモへの3つの恋のお題:あどけない寝顔/愛し方なんて分からない/しらじらと明けていく夜
穏やかな寝息が夜の空白を埋めている。勝ち気な瞳と余裕に満ちた笑みを浮かべる口元を隠した彼女の寝顔は、起きている時よりも少しだけ幼い。
至近距離で見つめると少し化粧が崩れていて、それすらも愛しく見える自分がおかしかった。
「ほんっとに、男として見られてないんだな……」
ため息と共に吐き出した独り言はかすれていた。
サシで飲んでいた店も閉店に近づき、自分の家で飲み直そうと誘われ気分が高揚したのもつかの間。1時間もしない内に、彼女はテーブルに突っ伏して眠ってしまった。顔の下に引いた腕が柔らかい頬を潰している。
起きている時にも少しも自分を異性として見ているような様子を見せず、彼女はただただ友人と楽しんでいるという態度を崩さなかった。
信用はされているのだろう。間違いなく。それは、喜ばしいことだ。けれど、どうしようもなく苦しいのも確かだった。友人というより、身内のように──弟のように見られていると言う方が正しいのかもしれない。もう出会って長いし、知り合った頃、自分はまだ未成年だったのだ。今はもう酒を酌み交わしているのに、と思いはするのだけれど。
『もう子供じゃない』と主張する度に返ってくる『そうだね』という優しい言葉と眼差しは、その実自分を子供としてしか見ていないのだと雄弁に語っていた。
「ひどい人だなぁ」
どうすれば、自分を男として見てくれるのだろう。この、隙も油断も見せてくれるくせに近づきがたい人は。嫌われてもいいと覚悟して無理矢理距離を縮めようと思うには、既に彼女が大切すぎた。嫌われたくないし、傷つけたくない。
時間は午前3時を回っている。雨戸を下ろしておらずレースのカーテンのみしか閉められていないリビングの窓から、冴え冴えとした月の光がかすかに見えた。
夜空と青白い光が眩い朝の輝きを見せるまで、きっと自分は彼女の寝顔を覗き込むことしかできないのだろう。
お題:3つの恋のお題ったーより
1つ上の話の続き
呉雷庵
雷庵夢お題『人混みで 手を繋ぐ。』
煉獄の会場は思っていた以上に人が多い。団体の規模自体は拳願会とほとんど変わらない筈だけれど、とにかく観客が多いのだ。やはり利権のための争いと興行のためのショーでは全く違う。神殺ドームに着き試合会場へと向かう道も拳願会の試合では有り得ないほどにごった返していて、なんだか気後れしてしまう。そもそも、ドームでやる裏の格闘大会ってなんなの。
人にぶつからないよう苦労して歩く中、斜め前を歩く雷庵が、の前を通り過ぎる一団に遮られて数秒見えなくなる。視界が晴れたと思ったらジャージを着た背中は消えていて、さっと焦りが背を走った。急いで前に進むも金髪の頭は見当たらない。
やだ、見失ったかも。
どうしようかと思ったところで、舌打ちと共に強い力で体を引かれた。
「何をぼさっとしてんだ、トロくせえな」
温かく乾いた感触が右手を覆っている。見上げれば、不機嫌な顔をした雷庵がこちらを睨んでいた。
「ごめん、大きな集団が雷庵との間を通ろうとしたから道譲ったら見失っちゃって」
「次面倒かけやがったら殺すからな」
「(怖……)」
「俺とお前の間を通ったやつをだぞ」
「そっち!? 分かった、気をつける」
「クカカッ、いい返事だ」
手を繋いだまま、雷庵とは通路をまた歩き出した。
お題:2人でじゃれったーより
呉雷庵お題『わざとらしく 邪魔をする。』
「へー、じゃあしばらくあそこの高層ビルの建設現場でお仕事なんですね」
「そうなんだよ……俺、高いの苦手だから気が重い」
前から思ってたけど、本当になんで鳶をしているのか不思議だ。ため息をつく変造さんを見ながらそう思っていると、ふいに私たちの間に影が差した。影の主は変造さんの組んだあぐらの膝先と私の太ももの間に無遠慮に踏み入る。そのまま無理矢理スペースを作って、どっかりとその場に座り込んだ。
「ねえ~! 雷庵、邪魔!」
「あァ? 知らねえな」
なんでわざわざ間に座るのか。私たちを押しのける形で座り込んだ雷庵は、抗議の声にこちらをギロリと睨んでから変造さんと肩を組んだ。
「よォ、なんの話してたんだよ」
「いや別に大したことは……」
引きつった顔で雷庵から距離を取ろうとする変造さんと話を続けようと、大きな身体の横から身を乗り出す。
「変造さん、ってちょっと!」
図々しい男はこちらを見もせずに、私の顔を手で押さえてグググと後ろへと追いやった。
「手離してよ! 化粧崩れる」
「うるせえ女だなァ!」
いや、私が先に話してたんだけど! 信じられない奴。
腹いせに肘にパンチを決めても、雷庵はまったく動じずに、そのまま私が変造さんと話そうとするのを邪魔し続ける。
「お前も結構分かりやすいな」
苦笑する変造さんに雷庵が大きな舌打ちを返すのが聞こえた。
お題:2人でじゃれったーより
雷庵お題『不機嫌に あーん。』
話があると呼び出された先は小洒落た喫茶店で、話があるはずの女はのんびりとした顔で季節限定の林檎とキャラメルクリームだかのパフェを食べている。
「呉一族って体内も強い感じ? そんなあっついコーヒー勢いよく飲んだら上顎の皮ベロベロになっちゃいそうだけど」
おまけに、ちょくちょくお喋りも挟む。彼女の言うとおり呉の一族は口内や内臓も一般人より強いが、そのまま答えるのも癪なので、雷庵は舌打ちを一つ返した。
「食うのが遅え」
「まあまあ……まあまあ、落ち着いて」
こちらがブラックコーヒーを半分飲む間に、カラフルな山は山頂をちょっぴり削られただけに留めている。目を細めてじっと見つめてもまったく急ぐ様子は無くて、彼女はただただ細面に喜色を湛えて甘い幸せを味わっていた。
「結局話ってのはなんなんだ」
「まあまあまあ……いいじゃないですか」
「何度まあまあ言うんだテメーはよォ」
これが初めてならここまで急かしはしない。だが、これで何度目かも分からないほどなのだ。話があると言って呼び出され、彼女がちんたらとパフェを食べるのを眺め、特に意味のある会話はせず、だらだらと時間を過ごした挙げ句解散するという流れは。いや、まだ今日は解散していないのだが、この様子だと今回もこれまでとまったく同じ展開になる可能性が非常に高い。
結局の所、正直それでも悪くないと思ってしまっているのが余計にムカつく理由だ。この女にも自分にも。心の奥底でそう理解しつつ見ないふりをして、雷庵は年季の入った木目の目立つテーブルに行儀悪く頬杖をつく。暇を持て余しているように見えたのか、向かいの女は思いついたように「あ」と声を上げた。
「雷庵も食べる? 美味しいよ」
「ふざけてんのか?」
「まあまあ……ほら」
間延びした声と共にパフェ用の細長いスプーンが一掬い、林檎を煮詰めたもの──コンポートとか言うらしい──とクリーム、そしてパイのひとかけを眼前に差し出す。払いのけても良いのだが、機嫌を損ねたら結局話とやらをせずに帰られる可能性もある。数瞬制止して思考した後、最大限の不服を眉間に示して口を開けた。そのままパフェスプーンは少し前に進み、まだコーヒーの温度を覚えている舌に触れる。
「どう?」
様々な種類の甘さとそれを引き立てるほんの少しの焦がしキャラメルの苦み。程好い食感を残すシナモンの効いた林檎と一瞬の内に溶けるクリーム、さくりとアクセントを加えるパイ生地とほどける冷たい食感。すべてが合わさって胃へと滑り落ちる。
「……クソ甘ぇ」
「よかった~、美味しいよね」
「耳腐ってんのか」
また一口分を掬って差し出してくるのを今度こそ手で押しとどめて、まだ熱いコーヒーを飲んだ。悔しいことに舌に残るパフェの甘さと合わさり、苦みがより旨く感じる。
「全部食ったらいい加減何の話なのか教えろよ」
「まあまあまあ……それはまあいいじゃん」
「次まあまあって言いやがったら殺すからな」
結局この日も最後までまともな話はされなくて、よっぽどぶん殴ってやろうかと思った。
お題:2人でじゃれったーより
大久保直也
貴方は大久保直也で『寄るな、色男』をお題にして140文字SSを書いてください。
「おっ、大久保じゃねーか。デート中か?」
背中に男の人の声がかかる。隣を歩いていた大久保さんは、その声を聞いた瞬間にこの世の終わりみたいな顔をした。
私が振り返るよりもずっと早く視界が塞がれる。
「見たらアカン!!」
まるで私のドッペルゲンガーでも現れたみたいに切羽詰まった声だった。もちろん、実際に居るのは違う。大きな手が視界を覆う前に少しだけ見えた声の主は、派手な銀髪に褐色の肌をした男の人だった。
「おい、なんで顔隠してんだよ」
「やかましい! 最悪や……なんで今氷室と会わなあかんねん」
氷室さんというらしい。二人の口調から察するに知らない仲ではないようだ。結構仲良しそう。
「大久保さんのお友達ですか?」
「あっ!」
こっちから何か言うとは思っていなかったようで、視界を隠す大久保さんの手が大袈裟にびくつく。体格が私と一回りも二回りも違う彼の手は、片手だけで私の顔全体を覆うくらいに大きい。
「そうだよ。君は大久保の彼女かな?」
「おい!! お前は返事せんでええねん!」
「いや失礼だろ」
目の前にある手の距離が、肌の色が分かるくらいから視界を真っ暗にするくらいまでに近づいた。もう鼻の頭に触れそうだ。
「もうすぐそうなる予定です」
「え!?」
急に視界が明るくなって昼の日差しが目を刺す。思わず眩しさに目を細めた私の顔を覗き込む大久保さんは、見たことがないくらいに焦った顔をしていた。
ようやく見えた氷室さんは整った顔立ちをしていて、なんとなくこれまでのドタバタの理由が分かる。
「心配しなくても、大久保さんしか見てないですよ」
口を開いて立ち尽くす彼を見て、氷室さんが口角を上げた。
「よかったな、大久保。俺のお陰かな」
「んなわけあるかい!」
お題:140文字で書くお題ったーより
大久保直也へのお題は『好きだ、って言ったら逃げるくせに』です。
ちょっとでも接触できるイベントには欠かさず参加している。彼はアイドルではないし、野球のようなメディア露出の多いスポーツの選手でもないから滅多に機会は無いけれど、それでもこうして毎試合良い席を取ったりイベントに参加していればこっちの事を認識してくれるくらいには優しい人だ。
「おっ、また来てくれたん? 嬉しいわ!」
「大ファンなんで!」
それに大久保さんのことが好きだからです、と言いたいところを我慢した。
若いネーチャンにこんな応援してもらえるなんて俺にも春が来たんかな、なんて笑って言う彼が、本当のところ、そう軽率な人じゃないことは分かっている。ファンだから愛想良くしてもらえるけれど、ファンだからこれ以上近づけない。下手にこっちが領域を超えるような発言をしたら、良識のある大久保さんはきっともう私に笑いかけてくれない。
むしろこの近さが辛いなんて、変な話だ。
そう思いながら、差し出された大きな手とファンらしく握手した。
お題:お題ひねり出してみたより
鷹山ミノル
貴方は鷹山ミノルで『甘やかせる権利』をお題にして140文字SSを書いてください。
己の身体には到底存在しない、柔らかい感触が頭の下にある。自分でも驚くほどに安心できる心地に身を委ねていたが、視界いっぱいに広がる恋人は安寧とは程遠い表情をしていた。
「ダメだ痺れてきた、まだ1分経ってないのに」
「だから言ったろうが」
膝枕からゆっくりと身体を起こす。太ももをさする彼女はしょんぼりとしていた。
「だってミノルさん身体の割に顔めちゃくちゃ小さいから……いけるかもって思ったの」
「お前な、俺の顔と身体は繋がってるんだぞ。頭だけ載せても身体の重さもある程度は反映されるに決まってるだろ」
無言で頷きながらも、どこか不甲斐なさそうに女は自分の足を見た。
「疲れたって言ったから……前は弱みを見せなかったのにそういうこと言ってくれたのが嬉しくて」
思いも寄らない言葉に瞠目する。
役に立てないなあ、としょげた顔で言うのに、もう十分甘えていると伝えたら笑顔になってくれるだろうか。
お題:140文字で書くお題ったーより
鎧塚サーパイン
あなたは『無表情でそわそわする』サーパインのことを妄想してみてください。
危なげの無い試合だった。
戦鬼杯の予選が終わり、見事隼に勝利したサーパインに声をかけようと近づいたガオランは彼の様子がおかしいことに気づいて、歩みを止めた。どこか、そわそわとしている。試合の前なら分からなくもないが──まあ試合の前であってもサーパインが緊張している所などろくに見たことがないが──試合の後に、何を落ち着かないでいるのか。いつもの快活な様子とも少し異なっていて、その大きな口は笑みを浮かべていない。注意深く観察してみれば誰かを探しているようで、辺りを見回していた。
一体誰を、と思った所でサーパインは目当ての人物を見つけたのか、ズンズンと大股で歩いていく。男が止まったのは、一人の女の前でだった。ガオランに背を向ける形で立っているので風貌はよく分からない。だが、その女の顔を覗き込むサーパインを見て、ガオランはぎょっとした。
その表情は「愛おしい」と、言葉より余程雄弁に語っていた。太い眉は緩められ、つり目がちの大きな瞳は優しく細められている。何より、いつもと比べてずっと穏やかな声で話しているのか、何を言っているのかが聞き取れなかった。
お前、そんな顔ができたのか。愛しくてたまらないとでもいうような、そんな顔が。
見つめ合っているであろう二人は何も隠していないのに、どこか見てはいけない物を見たような気になって、ガオランはすいと顔を逸らした。
──二人きりの会話を楽しんでいるようだし、もう少ししてから声をかけよう。そして、時間があれば女性の事を聞いてみてもいいかもしれない。
そう決めて、ガオランはその場を離れた。
貴方は鎧塚サーパインで『ずるいずるい、可愛い』をお題にして140文字SSを書いてください。
サーパインって、結構ずるいと思う。今まで話した共通の知人は誰一人として同意してくれなかったけれど、私はずっとそう思っている。ずるいというか、強かというか。基本的には善良で優しくて、明るい。けれど、彼がちょっとずるくて、欲を持つ、一人の大人の男なのだな、と時に思い知らされる。
そういうことをサーパインとした後、私はいつも疲れ切っている。体格の違い、体力の違い、精力の違い。全てにおいて彼が私を圧倒的に上回っているからだ。こういう時、サーパインは決して乱暴ではない。それどころか丁寧で蕩けそうになってしまうくらい、優しくて気を遣ってくれる。それでも、やっぱり私はいつもヘトヘトだった。
明日は仕事が無いからと話していたからか、「もう無理」と私がベッドに沈んだのを見て、サーパインは眉を下げた。もっと一緒に夜を過ごすつもりだったのかもしれない。仰向けに横たわる私の額に滲む汗を丁寧に拭って、そのまま優しく頭を撫でる。少し熱いくらいの体温が気持ちよくてうっとりとしていると、サーパインは私の耳元に顔を近づけた。
「ダメか……?」
「!」
視線だけ動かすと甘く細められた黄金の瞳と目が合う。普段とはまったく違う夜の怪しさをまとって、私を見ている。
「優しくする」
ぎ~!!!!!!
頭を掻きむしってそう大声を出したくなるのを抑えた。私にもう少し理性が無かったら、そして体力が残っていたら、ベッドの上で転げ回って叫んでいただろう。
一体なんなのだろうか、この男。180cm以上あって、90kg近い体躯のくせに、なんで縋るように見てくる目がこんなにかわいいのか。そして、この目が私に効く事を知っている。
こういうところがずるくて、かわいくて、かっこよくて、好きだなって思ってしまう。
「……一回、だけなら」
言い終わると同時に大きな体が私の上に影を作る。熱い吐息と同時に唇が降ってきて、私は明日は動けなくなることを覚悟しながら目を閉じた。
お題:140文字SSのお題より
夏忌
オメガ159話の後のしょんぼり師父をなんやかんやあって飼いたい
「夏くんさ~、ボンボンでしょ? それかめちゃくちゃ甘やかされて育ったと見た」
「……なんだよ急に」
前半だけを見れば褒めているのかとも思えるが、後半も考慮に入れれば明らかに失礼な意味を持って口にされたのだと分かる言葉に、夏は目をすがめて隣に座って洗濯物を畳む女を見た。ちなみに夏もノロノロとだが手伝いをしている。
「あ、否定しないんだ。図星かな? しかも両方」
「なんでそう思ったかって聞いてんだろ」
「えー? だって洗濯物上手に畳めないし、」
「前よりマシになっただろ!」
見ろ!!と夏が床から持ち上げたTシャツは、宙に浮いたせいで形を崩す。それを見て苦笑しながら、女は先ほどまでTシャツのあった場所の隣に畳まれているタオルを指さした。
「タオル畳むときは端を揃えよう! そっちのが気分いいでしょ。しまう時も楽だし」
確かに女が畳んだものの方が綺麗な長方形をしている。こちらをじっと見つめる視線から畳み直しを指示しているのだと分かり、夏は舌打ちしながら自分が先ほど床に置いたブルーのタオルを手に取った。すかさず彼女からは「舌打ちしないよ」と幼子をたしなめるような口調で注意が飛んで、絶対に自分の方が年上なのに、と苛立ちながらも夏は無言で従った。
夏の二倍の速度で作業を進めながら、家主の女は言葉を続ける。
「それに私が作ったご飯もキッチンからテーブルに持っていこうとしないしさ~」
「……持って…いく……?」
「すごいな~、そもそもそういう選択肢がない感じか」
参ったね、と言いながらもあんまり困った風には見えない。むしろ面白がっているように夏には見えた。
「居候してる上にご飯作れないんだから、普通の人だったらもうちょい申し訳なさそうにしたりすると思うんだよね。でも夏くん、そういうの皆無じゃん。周りの人が全てやってくれるのに慣れてるよねぇ」
「……」
全てを持っていたから、全てを人任せにして生きてきた自覚はある。というか、意識してそのように生きてきたのだ。そして今は、何も持っていない。
明らかに自活力の無い男が路頭に迷っていたことを、彼女はどう思っているのだろう。何を思って、家に招き入れたのだろう。この女は壊滅的に危機感が無いが、馬鹿ではない。未だに真意が分からないまま、極東の島国で、夏はヘラヘラした年下の女と一つ屋根の下に住んでいる。
「まあ、でも確かに前よりは畳むの上手くなったね。ちょっとずつ覚えていけばいいんじゃない? 夏くん若いんだし」
「あのなァ~、言っとくが俺は絶対お前より年上なんだよッ!!」
全3話くらいのシリーズにしたい